治療の判断に必要な情報

・患者さんの年齢、今後の妊娠の可能性について
・細胞診
・HPV検査
・コルポ検査
・組織診

以上をもとに病状説明、お勧めの治療の提案を行い、それに対する患者さんのご意見を伺って治療を決定します。

治療の方法

蒸散:焼いて消滅する。病理の評価はできないが、負担は少ない。
切除:円錐切除(一律に円錐型に切り抜く)、LEEP(部分的な切除)。切除した標本で病理診断を行うことができる。
それぞれに使用する器具:レーザー、CO2レーザー、電気メス、高周波切除機器(下平式など)、など
特殊な治療として、PDT(光線力学療法)がありますが、特定の施設でのみ行われています。お話のうえでご希望があればご紹介させて頂きます。

基本的な治療法は、蒸散か切除です。それをどの器具を使って行うかの違いで、難しい名前の器械が優れているわけではありません。

当院のこだわり

最初に挙げた情報で、しっかりとしたリスク評価を行い、適切な治療を選択する。当たり前の「オーダーメイド」が専門医のこだわりです。もちろん、何にも例外はありますが、手術としては定型的な円錐切除が最も簡単です。ただ、病理の結果をみて、「こんなに切らなくても良かったのでは」というのは避けたいところです。逆に、蒸散は病理の確認もできず術前の評価だけで行うため、結果だけが全てであり、手術手技は簡単でも本質的には難しい手術だと思っています。
当院での治療の選択肢は、蒸散、LEEP,円錐切除です。すべて高周波切除機器(特殊な電気メスのようなもの)で行います。LEEPは文字通りのフリーハンドで病巣切除するので、神経を使いますが、円錐切除の際にもコルポ所見などを参考に切り具合を変えます。下の図を見ても、同じ円錐でも印象が異なると思います。
この違いは、何なのでしょうか?
円錐切除の一番のデメリットは、「術後の早産リスクの上昇」です。そして、このリスクは切除の大きさと関連していると考えられています。
一方で、円錐切除のメリットは、「確実な病理診断が可能」であることです。術前のコルポ検査で異形成とされたうちの、ごくわずかに初期の頸癌がみつかることがあります。逆にいうと、ごく初期の子宮頸癌は切除標本(円錐切除、一部のLEEP)でしか診断されません。つまり、癌の疑いが少しでもあれば、切除が必要となります。
臨床の現場で、これから出産の可能性のある年代の方に切除が必要となることは多く経験されます。もちろん、出産と関係のない年齢の方でも、診断を確実にするために切除が必要となることがあります。
その答えが、「切り方を十分検討する」ことなのです。さらに、総合的な判断で、「これなら切らなくても良い」と考えた場合にのみ、蒸散を行っています。